前回ご紹介した「雨 → 晴れ」を使ったアニメ演出について、使い方のポイントをさらに踏み込んで説明します!
まずは演出パターンの振り返りです。
「雨 → 晴れ」という天気の移り変わりがストーリー上の問題解決とリンクすると、見ている人にとっては安心感や爽快感が強まります。
ドラマのスケールを調節できる
さらに、雨の強さをどれくらいにするか、雨の期間をどれくらいにするかによって、悩みの程度を調節することもできます。
例えば人類にとっての大きな危機が発生し、主人公がそれに立ち向かわなければならない・・という状況なら、真っ黒に立ち上る雲からの突然の雷雨や暴風雨がふさわしいでしょう。
そして人類の英知を結集して問題を解決した暁には、雲を打ち払うように天から太陽の光が次々と差し込むことで大勝利を表現できます。
逆にもっと個人的な悩み、例えば進路希望をなかなか書けない中学生の、将来に対する漠然とした不安・・というくらいのスケールの話であれば、しとしと雨が何日か続くような描写がふさわしいと思います。
そして自分のやりたいことがようやく見えてきたときには、ふといつの間にか雨がやんでいることに気づき、庭のカエルと目が合う・・というような控えめな表現がちょうどいいんじゃないかと思います。
こんな風に、一口に「雨 → 晴れ」の展開といっても、描写の仕方によってトラブルの大きさ、感情の強さまで観客に伝えることができるんです。
逆に言うと、あなたが漫画や小説などの創作をするときには、天気を適当に決めてはいけないということでもあります。
問題の深刻さ、苦悩の深さにぴったり合う天気を意図的に選んで描写することを意識しましょう!
他のパターンでも調節できる
「雨 → 晴れ」以外のパターンでも、ドラマのスケールは調節できます。
例えばヒーロー物における「ピンチ → 勝利」のパターンの場合でも、どれだけのピンチに追い込むかは調節ができますよね!
当たり前ですが、ラスボスとの決戦のときに一番深刻なピンチに陥るように組み立てていくのがいいでしょう。
そのためには、手前の中ボスとの戦いではケガの度合いを軽くするとか、主人公キャラとは別のキャラのピンチにするとかして、ラスボス戦でのピンチネタが尽きないように考えておく必要があります。
同様に、トラブルを起こすにしても、事件を起こすにしても、それが全体ストーリーの中腹なのかクライマックスなのかで深刻度を変えるといいでしょう!
世の中にあるストーリー物の創作物の大半が、このように考えて作られています。
テレビや漫画など身近なもので毎日のように見つけることができる手法なので、少し意識して見てみるとすぐに自分でも使えるようになりますよ!
苦悩する主人公の心情に合わせて、数日間にわたって雨の日が続く(=緊張)ようにする。
悩みが深くなるのに合わせて、雨から嵐になる(=緊張の強化)。
最後に悩みが解決するタイミングで雲の割れ目から太陽の光が差し込む(=緩和)様子を描く。