「パラダイム」という言葉は、元々は科学についてのみ使われていました。
しかし今では科学以外のいろんな分野においても、その業界の常識、定説、価値観といった意味合いで使われています。
なのでパラダイムという言葉をどこかで聞いたことがあるという人もいるかもしれませんね。
さて、前回はスポーツを例にしましたが、ここでは科学の話に戻しましょう!
科学におけるパラダイムとは、以下のようなものを含むと考えられます。
- 正しいと認められている科学理論
- 妥当とみなされている実験手法
- 広く用いられている実験器具
これまでの定説に変わる新たな説明が登場し、それが科学者たちに広く受け入れられるようになると、パラダイム・シフトが起こります。
つまり新たな科学理論の浸透とともに、科学者たちの実験手法や実験器具も様変わりするということです。
パラダイム・シフトは4つのプロセス
パラダイムという言葉の名付け親は、トマス・クーンという科学哲学者です。
(トマス・クーンの名前や、科学哲学という言葉は、覚えておいていいかもしれません)
そして、パラダイムシフトは次の4つのプロセスを含みます。
通常科学(Normal Science)
これは、既存のパラダイムに基づいて行われる科学研究の段階です。
科学者たちは既存の理論や方法を使って問題を解決し、知識を積み重ねていきます。
この段階では、科学者たちは基本的に同じ前提を共有しており、大きな異論なく協力して研究を進めることができます。
異常科学(Anomalies)
通常科学の観察の中で、現行のパラダイムではすっきりと説明することが難しい、異常な現象やデータがいくつか発生します。
これらは、定説に何か例外条件を付け加えることで解決したと見なされたり、実験の誤りや誤解と見なされることもあります。
危機(Crisis)
異常な現象やデータが蓄積し続けると、現行のパラダイムがその説明力を失っていきます。
そして科学者たちの間に危機感が生まれます。
この段階では、既存の理論や方法では問題が解決できないことが明らかになります。
それぞれの科学者が異なる手法や説明を試みるため、科学者同士での無理解や衝突も起こります。
パラダイムシフト(Paradigm Shift)
危機が深まる中で、多くの問題を解決できそうな新しい理論が提案され、受け入れられることがあります。
この新しい理論は、従来の定説を覆し、科学の新しいパラダイム(理論・方法・道具)を提供します。
これにより、科学者たちは新しいパラダイムに基づいて、再び協力して研究を続けることができるようになります。
関連書籍を見る
「科学革命の構造 新版」トマス・S・クーン (著), 青木薫 (翻訳), イアン・ハッキング (その他)/みすず書房
この本は、読むのはけっこうしんどいです!
パラダイムやパラダイムシフトについては、もっと易しく解説した書籍は他にもあります。
AIに訊いても十分な解説をしてくれると思います。
なので、あえてこの本を読む必要があるとは言いません。
ただ、「パラダイム」という言葉の初出となる歴史的な本なので、教養のために知っていたらお得かな~とは思います。
「パラダイムシフト? あぁ、トマス・クーンの『科学革命の構造』なら読んだよ」
と、読んでなくても言っておけば、
(この人、勉強してるんだな~)
と思ってもらえるはずです!
海外の科学仲間がいるなんて人(または、いたらいいなと思う人)は、
「The Structure of Scientific Revolutions」
という原題も覚えておくといいかもしれません。
古典に分類される有名な本の場合、英語のタイトルを言うことで外国人にも通じることがあります。
英語での細かい議論まではなかなかできなくても、有名な本のタイトルを言えれば、
(コイツ、詳しいんだな)
と思ってもらえますよ!