「複数動作をセット化して、無意識に繰り出せるようにする」
ということの具体例を見ていきましょう!
ボクシングのコンビネーション
実戦的な例として、ボクシングを考えてみます。
ボクシングでは、ジャブ・ストレート・フック・アッパーカットといった、基本のパンチ動作があります。
- ジャブ:左手だけを素早く前に突き出す軽いパンチ。距離を測る、注意を引き付ける、相手の動きを妨げる、などの効果があります。
- ストレート:上半身ごと回転させて右手を前に突き出す重いパンチ。相手にダメージを与えることを目的とします。
- フック:上半身ごと回転させて、右手または左手を相手の側面に打つ重いパンチ。正面ガードを回り込んで相手にダメージを与えることを目的とします。
そしてこれらを組み合わせた、コンビネーションと呼ばれる攻撃パターンがあります。
最初のジャブで相手の注意を分散させつつ距離を測り、続くストレートでダメージを与えます。
ジャブとストレートが相手の防御を正面に集めます。そこで側面からフックを打つことで、追い打ちのダメージを与えます。
ジャブを二連続で放つことで、相手の防御の傾向を判断しやすくすると共に、リズムを崩します。これにより最後のストレートをより効果的にします。
ボクシングの選手は、このようなコンビネーションをいつでも繰り出せるように、繰り返し練習します。
例えばワンツースリーでは、三つのパンチを一つ一つ順番に意識して繰り出すのではなく、繋がった一連動作として、勝手に体が動いてくれるようにトレーニングしているのです。
スピーディーに繰り出せる
試合の中で相手の防御を崩したいと思ったときに、
(ええと、まずはジャブで注意を引き付けよう)
(その後は、ストレートを打てばきっと相手は正面をガードするぞ)
(そのスキに横から攻撃するとよさそうだな。うん、じゃあ最後はフックにしよう)
こんな風に長々と考えていたら、こちらが攻撃を食らってしまいます。
ごちゃごちゃ考えずに、
(よし、ここはワンツースリーだ!)
と、一つのことを考えれば、三つのパンチがセットで出るようにしてあるのです。
意識する回数を減らすことで、複雑な攻撃でもとっさに繰り出すことができます。
他のことを考えられる
また、無意識に体が動くようにしておくことで、他のことを考える余裕も生まれます。
例えばダブルジャブストレートでは、二回のジャブの間に相手の防御傾向を見抜く必要があります。
- ジャブに対してガードするのか、よけるのか?
- 二回のジャブに対して同じ対応をするのか、変えてくるのか?
いつも同じ側によける、といった相手の防御パターンが分かれば、効果的な攻撃の方向やタイミングが分かります。
パンチを打ちながらそれを考えるのですから、二回のジャブの動作それ自体をいちいち意識している余裕はありませんね!
パンチ動作は体が勝手にやってくれるようにしておくことで、頭は別のことを考えるのに使えるんです。
セット動作のメリットまとめ
まとめると、コンビネーション動作を無意識でできるレベルにしておくことで、次の三つのメリットがあるということですね!
- 1回の意識で複数の行動ができる
- とっさに繰り出すことができる
- 同時に別のことを考えられる
このように、いつでも無意識に出せるように訓練された一連の身体動作のことを、このサイトでは「セット動作」と呼ぶことにします。
そしてこの「セット動作」をたくさん持っておくことは、多くのジャンルのパフォーマーにとって大事なことなんです。