小学生に学ぶ「緊張と緩和」の演出

緊張と緩和」って聞いたことありますか?

テレビが好きな人なら、有名なお笑い芸人が言っているのを聞いたことがあるかもしれません。

緊張状態が続き、それが緩和されたときに快感が訪れる

それが「緊張と緩和」というアイデアです。

ピンチのシーンは徹底的に!

とある平日の昼下がり、一人でヒーローごっこをしながら帰宅している小学生がいました。

まだぴかぴかのランドセルを背に、こんな感じで独り言をしゃべりながら歩いています。

「くそっ、骨をやられた! 左手がもう動かない!」

眉間にしわを寄せて、けっこう痛そうな様子です。

「うわっ、右手もやられた! もう両腕がうごかない! ゆ、許さないぞ!」

「こ、この霧は・・! 視界までうばわれた!」

よろけながらブロック塀に肩を預け、苦しそうな息づかいをしています。

このあとも、起死回生の必殺技を放とうとするのですが、発動直前に吹っ飛ばされてしまい、ついに四肢全ての自由を失ってしまいました。

この小学生は、とにかくできる限りヒーローを痛めつけて、ひたすらピンチに追い込んでいきます。

なぜそんなことをするんでしょう?

「緊張と緩和」の原則

彼が徹底的にヒーローを痛めつける理由、それは、

ピンチのシーンが深刻であればあるほど、勝利シーンの爽快感が強まる

という大原則を理解しているからです。

ヒーローが逆転の必殺技を放ちそうになるシーンが何度もやってくるのですが、彼はそのたびに新たな逆境を作り出して、勝利をキャンセルしていました。

簡単に勝利シーンに移行するのはもったいないと考えて、可能な限り先延ばししようとしているようでした。

まだまだ勝っちゃダメだ!

もっとうんとピンチにしてからの方が、さらにドラマチックな勝利シーンになるぞ。

これ以上ないくらい、ものすごいピンチに陥る方法はないかな?

両手両足に、視界まで奪った。

さぁ、あとは何ができるかなー・・?

これが彼の頭の中です。

そしてこの考え方は、プロの演出家と全く同じものなのです。